基本的人権
1.基本的人権の種類
(平等※)権…差別されない権利 |
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(自由※)権 |
(精神※)の自由 |
思想・良心の自由、信教の自由、学問の自由、集会・結社・表現の自由、通信の秘密 |
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(身体※)の自由 |
奴隷的拘束・苦役の禁止、不当逮捕の禁止、抑留・拘禁の禁止、黙秘権、一事不再理、拷問・残虐な刑罰の禁止、住居の不可侵、自白強要の禁止、令状主義、遡及処罰の禁止 |
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(経済活動※)の自由 |
居住・移転・職業選択の自由、財産権 |
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(社会※)権 |
(生存※)権…人間としての最低限度の生活を国に保障してもらう権利 |
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(教育を受ける※)権利…教育を受ける環境と機会を国に保障してもらう権利 |
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(労働基本※)権 |
(勤労※)の権利…仕事と最低限の労働環境を国に保障してもらう権利 |
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(労働三※)権 |
(団結※)権…労働組合を作る権利 |
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(団体交渉※)権…労働組合が経営者と話し合う権利 |
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(請求※)権 |
(国家賠償請求※)権…国や公務員に人権を侵された場合、お金がもらえる権利 |
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(裁判を受ける※)権利…トラブルが起きた場合、裁判によって解決してもらえる権利 |
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(刑事補償請求※)権…無罪なのに裁判にかけられた場合、お金がもらえる権利 |
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(請願※)権…国に対して自分の意見や苦情を言うことができる権利 |
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(参政※)権 |
(選挙※)権…選挙で投票する権利 |
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(被選挙※)権…政治家に立候補する権利 |
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直接民主制 |
(国民審査※)…気にいらない最高裁判所の裁判官を投票で辞めさせる |
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(特別法※)の制定…特別法の制定を最終決定する |
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(国民投票※)…憲法の改正を最終決定する |
2.平等権
〜第(14※)条〜
�すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、(信条※)、性別、社会的身分または(門地※)により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。
ア、男女差別関連
国連の(女子差別撤廃※)条約を批准したことを受けて、(男女雇用機会均等※)法を制定
1999年には(男女共同参画社会基本※)法が制定され、労働環境のほかにも家庭、政治などあらゆる面での男女の差別待遇を改善。
(ジェンダー※)とは社会的・文化的に形成されてきた男らしさ、女らしさのことで、今の時代にあっていないため、これを見直し。
2001年には家庭内の暴力に対して(DV防止※)法((ドメスティック・バイオレンス防止※)法)を制定。
イ、人種差別関連
1995年に国連の(人種差別撤廃※)条約を批准し、1997年に(アイヌ文化振興※)法を制定。
現在、外国人は(国の選挙も地方の選挙も※)行くことができない。
外国人が公務員になるときにも制限があり、地方公務員では、政治に影響を与えない技術職を中心に採用が増えてきているが、(国家公務員※)としての外国人の採用はほとんど行われていない。
在住外国人に対して指紋の押捺を義務付けていたが、この(指紋押捺※)制度は1999年に廃止。
ウ、裁判関連
(平等※)権 |
(尊属殺重罰※)事件 違憲判決 |
内容 |
・父親に性的暴行を受け、5人の子どもまで産まされた娘が父親を殺害。 |
注意 |
・当時の刑法には、尊属(目上の親族)を殺害した場合のみ通常の殺人より刑が重くなる規定があったが、人命の重さを差別するのは憲法14条の平等権に違反するとして、刑法200条が(違憲※)判決をうける。
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(衆議院議員定数※)訴訟 違憲判決 |
内容 |
・衆議院議員の選挙で、都市部と地方で一票の格差がありすぎるのは憲法14条の平等権に違反するとして、裁判の無効を訴える。 |
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注意 |
・今後は格差が「1:3」を超えたら(違憲※)とするという判決が出たが、そのときの選挙をやり直すのはめんどくさいのでしなかった。
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3.自由権
●精神の自由
(精神※) の 自由 |
(三菱樹脂※)事件 原告敗訴 |
内容 |
・学生時代の社会主義運動を理由に会社の採用を取り消された事件。 |
注意 |
・憲法19条の思想の自由が企業により侵害されたという訴えであったが、企業にも「雇用の自由」があるという理由で、原告の訴えは認められなかった。
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(津地鎮祭※)訴訟 合憲判決 |
内容 |
・市立体育館工事の安全を願う行事に、市が特定の神社に謝礼金7000円を公金から支払ったことは、憲法20条の信教の自由の政教分離の原則に違反するのではないか。 |
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注意 |
・この行事は安全を願うものであり、宗教活動というほどのものでもないので、訴えは認められなかった。 |
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(愛媛玉ぐし料※)訴訟 違憲判決 |
内容 |
・愛媛県知事が県の税金から、靖国神社(戦前の軍国主義のシンボル)に玉ぐし料約16万円を寄贈したことは、憲法20条の信教の自由の政教分離の原則に違反するのではないか。 |
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注意 |
・靖国神社は特別な神社であり、この神社への税金からの寄付は国民や外国からの反発も強いので、訴えは認められ、県知事の行為が(違憲※)判決。県知事は県に玉ぐし料を返却。 |
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(家永教科書※)訴訟 合憲判決 |
内容 |
・家永三郎氏が第二次世界大戦中の日本軍の残虐行為を記述した日本史の教科書を作ったところ、文部省の教科書検定にパスになかった。 |
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注意 |
・教科書検定は、憲法21条の表現の自由が禁止する「検閲」にあたるのではないかということが争われたが、教科書検定は教育内容の統一のためには必要なシステムとして訴えは認められなかった。 |
●身体の自由(人身の自由)
(一事不再理※)は、3回目の裁判で無罪が確定したら、その裁判はもう終わりというルール。
(令状主義※)とは現行犯をのぞき、日本の警察や検察官が、容疑者を逮捕するときには(逮捕令状※)。住居の中に入って捜査するときには(捜査令状※)が必要な制度。令状を発行できるのは(裁判官※)。
(遡及処罰の禁止※)とは、あとから作られた法律で昔の犯罪を裁いてはダメだというルール。
●経済活動の自由
( 経済 活動※) の 自由 |
(薬事法※)事件 違憲判決 |
内容 |
・新たに薬局を開設しようとしたところ、薬事法の半径100m以内に2軒以上の薬局を開設してはいけないという規定から、許可が下りなかった。 |
注意 |
・薬事法のこの規定は、憲法22条の職業選択の自由に違反するとして、(違憲※)判決を受け、薬局の開設は認められた。 |
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(共有林分割※)訴訟 違憲判決 |
内容 |
・他人と共同所有する森林を売却しようとしたところ、自分の持ち分が50%以上でないと自由に売却できないという森林法の規定から、売却することができなかった。 |
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注意 |
・自分の財産である森林を自由に処分できないのは憲法29条の財産権の規定に違反するとして、(違憲※)判決を受け、森林の売却は認められた。 |
4.社会権
〜第25条〜
�すべて国民は、(健康で文化的な最低限度の生活※)を営む権利を有する。
�A 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障および公衆衛生の向上および増進に努めなければならない。
(社会※)権 |
(朝日※)訴訟 原告敗訴 |
内容 |
・肺結核で入院中の朝日茂氏が、国からの生活保護月600円(約50年前)は、憲法25条で保障する最低限度の生活を保障できていないとして、訴えを起こす。 |
注意 |
・憲法25条の生存権は国の目標を示しているだけであり、生存権をめぐって国民が裁判に訴えることはできない((プログラム※)規定説)として、訴えは認められなかった。 |
5.請求権
(国家 賠償 請求※)権 |
(郵便法※)事件 違憲判決 |
内容 |
・郵便局の配達の遅れから、ある会社が780万円の損失を出したが、郵便法によると郵便局は配達のミスがあっても弁償する義務がなかったので、この会社が、郵便局が弁償しないのは、憲法17条の国家賠償請求権に違反するとして訴える。 |
注意 |
・郵便は国民生活にとって信頼されるべき重要なもので、郵便局のミスで国民に被害を与えれば、被害を弁償するのは当然として、郵便法が(違憲※)判決。 |
6.参政権
(国民審査※)とは衆議院議員選挙のときに、最高裁判所で働く15人の裁判官のうち、就任したての人と、就任して10年以上たった人の名前が書いた投票用紙を配られ、国民の過半数に×を付けられた裁判官をこの投票により直接やめさせることができるというルール。
(特別法※)とは、特定の市町村のためだけの法律のことをいう。これを制定するときは、国会での決議のあとその該当する市町村の住民による直接の投票で過半数を獲得しないと制定することはできない。
憲法を改正するときには、(国会で総議員の3分の2以上※)の賛成を得たあと、(国民投票により過半数※)の賛成を得ないと改正することはできない。
7.国民の義務と公共の福祉
日本国民の3つの義務。
・ (納税※)の義務
・ (保護する子女に普通教育を受けさせる※)義務
・ (勤労※)の義務
基本的に人々は自由に行動する権利を持っているけど(公共の福祉※)(みんなの幸せ、思いやり)のことを考えると、権利を制限されることがある。このような原理のことを(公共の福祉※)といいます。
8.新しい人権
●環境権
環境権の根拠は13条の(幸福追求※)権と、25条の(生存※)権。
〜第13条〜
環境権 |
(大阪空港公害※)訴訟 原告勝訴 |
内容 |
・工事の計画ミスにより、大阪空港周辺の住民が、基準値をはるかに超える騒音に悩まされた。 |
注意 |
・住民への賠償金と夜間飛行の差し止めを請求したところ、住民への賠償金は支払われたが、夜間飛行の差し止めは認められなかった。
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●プライバシーの権利
プライバシーの権利は第13条の「(個人の尊重※)」が根拠。
プライバシー の 権利 |
『(宴のあと※)』事件 原告勝訴 |
内容 |
・(三島由紀夫※)の小説『宴のあと』が、実在の政治家の私生活を題材にして書かれたものであった。 |
注意 |
・個人のプライバシーを侵害しているとして、訴えが認められ、三島由紀夫はその政治家に損害賠償金を支払う。 |
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『(石に泳ぐ魚※)』事件 原告勝訴 |
内容 |
・(柳美里※)の小説『石に泳ぐ魚』が、実在の女性をモデルに書かれていた。 |
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注意 |
・公的立場にもない女性のプライバシーを著しく侵害したとして、女性の訴えは認められ、裁判所はこの小説の(出版停止※)を通告した。
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1999年に制定された(通信傍受※)法は、警察官が凶悪犯罪の捜査のために、国民の電話などを盗聴できるようにする法律。プライバシーの権利が問題となっている。
2003年から実行されている(住民基本台帳※)法による(住基ネット※)は、日本国民全員に11桁の番号をつけ、個人の情報を国や地方公共団体のコンピュータで一括管理しようというもの。
(個人情報保護※)法は2003年に制定され、個人情報の不正利用を規制するための法律。
●知る権利
憲法21条の「(表現※)の自由」が根拠。
1999年には(情報公開※)法が制定され、これにより国民が請求すれば政府の情報を知ることができるようになった。公開される情報は内閣に関する情報に限られ、国会や裁判所、防衛に関する情報や個人の秘密に関する情報は請求することができない。
●アクセス権
(アクセス※)権は、テレビ局や新聞社などに反論する権利のこと。